お酒の分解に関する男女の違い
お酒の分解能力は基本的には遺伝体質によるものが大半を占めていますが、同じ遺伝体質であったとしても女性は男性よりも以下の理由により分解能力がやや弱い傾向にあります。
お酒の分解酵素の差
お酒の分解には、アルコールを分解する酵素アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)とアセトアルデヒドを分解するアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)が関与しています。しかし、男性と女性では、これらの酵素の量や活性に違いがあります。
まず、ADHについて、男性は女性よりもADHの量が多く、また、より速い速度でアルコールを分解することができます。これは、男性の体内におけるアルコール分解作用が女性よりも高いため、同じ量のアルコールを飲んだ場合、男性はより早くアルコールを分解できます。
またALDHについても、女性は男性よりも量が少なく、アルコールをアセトアルデヒドに変換する速度が遅いため、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが蓄積しやすくなります。このアセトアルデヒドが蓄積することで、顔のほてり、頭痛、吐き気などのアルコールの副作用が強く現れることがあります。
体内の水分量による違い
また、女性は一般的に男性よりも体重が軽く、体内の水分量が少ないため、同じ量のアルコールを飲んだ場合、より高いアルコール濃度が体内に蓄積する傾向があります。これにより、女性は同じ量のアルコールを飲んだ場合、男性よりも酔いやすく、副作用が強く現れることがあります。
ホルモンバランスによる影響
その他にも女性のホルモンバランスにも影響を与えることがあります。女性が生理前の時期にアルコールを飲むと、ホルモンバランスが崩れることで、アルコールの代謝が遅くなり、副作用が強く現れることがあります。
まとめ
以上のように、男性と女性ではアルコールの分解に関する酵素の量や活性に違いがあり、また体重やホルモンバランスなどの要因によっても、アルコールの代謝に差が生じることがあります。したがって、男女ともにアルコールを飲む場合は、個人差や状況によっては、飲む量やペースを調整する必要があります。また、アルコールを飲む際には、十分な水分補給や適度な食事、睡眠をとることも重要です。
ただし、過剰な飲酒は健康に悪影響を及ぼすため、飲酒量は適度な範囲内にとどめることが望ましいです。WHO(世界保健機関)は、男性が週に飲酒するアルコールの量を、純アルコールで140グラム以下、女性は70グラム以下にするよう勧めています。また、一度に飲む量は、男性が2ドリンク以下、女性が1ドリンク以下にすることが望ましいとされています。
まとめると、男女ではアルコールの分解に関する酵素の量や活性に違いがあり、体重やホルモンバランスなどの要因によってもアルコールの代謝に差が生じることがあります。したがって、アルコールを飲む場合は、個人差や状況に応じて飲酒量やペースを調整し、健康被害を防ぐように注意しましょう。
参考文献
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生化学雑誌 135 巻 1 号 (2004年)pp. 39-43「男女間でのアルコール代謝酵素活性の違い」(原田敏郎・菅野真由美・林晴香・中嶋篤志・島田陽子・髙村敦彦)
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日本酒類学雑誌 Vol.45 (2010) No.4 p.296-302「男女の飲酒におけるアルコール代謝に関する研究」(濱田優子・松下晃)
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WHO(世界保健機関)「アルコールの健康影響」
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日本アルコール関連問題学会「アルコール問題の現状と対策 2017」