お酒の分解・強さについて

お酒はどうやって分解されるの?お酒に強い弱いは何が関係しているの?

あの人はお酒に強いなぁ!とか、自分はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなるんです。など人それぞれお酒への受容性は異なるかと思います。また今日はなんだか普段より飲めるぞ!?という日もあるかもしれません。

お酒がどのように体内で分解されるのか。そしてどのような要因が影響しているのかについて解説していきます。

 

【お酒はどのように分解されるのか】

お酒を飲むとアルコールは人間の体内で大きく3段階の変化を遂げます。

エタノール⇒アセトアルデヒド⇒酢酸

お酒が身体に入るとアルコール(エタノール)はまずアルコール脱水素酵素(ADH1B)という分解酵素によってアセトアルデヒドという物質に変化します。そしてその後さらにアセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(主にALDH2)という分解酵素によって酢酸に変換されます。酢酸はその後、尿として排泄されます。このプロセスは主に肝臓で行われ、一般的にアルコールの代謝と呼ばれます。

アルコール代謝は一般的に1時間あたり0.1gのアルコールが代謝されると言われていますが、実際にはそのスピードは人によってかなり異なっております。

ではどのような要因が影響を与えるのでしょうか。

 

【遺伝体質による影響】

アルコール代謝は非常に複雑な要因が絡み合っており、体重・性別・飲酒前後の食事の有無・その日の健康状態など様々な要因が影響していますが、その中でも最も大きな要因は元々持っている遺伝的な体質によるものが大半を占めます。つまり元々お酒を分解しやすい体質の人もいれば、全く飲めないという人もいるのです。実は欧米系人種(白人)やアフリカ系人種(黒人)は、ほぼ100%がお酒に強い遺伝子を持っています。一方で日本人(およびアジア人の一部)には7タイプのお酒体質が存在します。

自分がどのタイプに属しているのか、どのぐらいの量が適量なのかは人によって大きく異なりますので、まずは自分のタイプを知ることが大切です。

 

【食事による影響】

食事による影響も多少存在し食事をとらない場合、アルコールの分解速度は速くなりますが、これはアルコールが胃から直接吸収され、肝臓に到達するまでの時間が短くなるためです。一方、食事をとると、胃の消化に時間がかかり、アルコールが吸収されるまでの時間が長くなります。これにより、アルコールの分解速度が低下します。よく空きっ腹にお酒は良くないと言われますが、それはこのような理由からです。

【性別による影響】

アルコールの代謝は性別による影響も存在しています。女性は男性よりもアルコールを代謝する速度が遅いため、同じ量のアルコールを飲んだ場合、女性の血中アルコール濃度は男性よりも高くなります。

【健康状態による影響】

健康状態もアルコールの代謝に影響を与えます。肝臓疾患を持っている人は、肝臓がアルコールを代謝する能力が低下しているため、アルコールの分解速度が遅くなります。また、薬物の使用や過剰なアルコール摂取は、肝臓機能を低下させ、アルコールの代謝に影響を与えることがあります。

アルコールの代謝は肝臓が主に行います。肝臓はアルコールを分解するための酵素を産生し血液中のアルコールを分解します。しかし過剰なアルコール摂取を行うことで肝臓が正常に機能しなくなることがあります。

その状態で飲酒を続けると肝臓細胞が破壊され肝炎や肝硬変などの疾患を引き起こす可能性があるため肝臓が調子悪いな?と思った際にはアルコールを控えたり、病院に行って検査をするなどの対応が重要であるとされています。

【まとめ】

お酒の分解プロセスおよび分解に与える影響について解説をしましたが、いかがだったでしょうか?力士の方がものすごい量のお酒を飲んだ!という噂話をよく聞きますが、その方はもしかするともともとお酒に強い体質な上に、体重も重く、そしてちゃんこをたっぷり食べた後にお酒を飲んだのかもしれませんね。

確かにその力士の方のように、お酒をたくさん飲めるのは羨ましい気持ちもありますが大事なことはそれぞれの方が、ご自身の体調に合った量を無理なく楽く飲むことです。みなさまも是非お酒を飲む時は決して無理をせず適量をお楽しみください!

 

 

参考文献

  1. Lieber, C. S. (2004). Metabolism of alcohol. Clinics in liver disease, 8(1), 1-18.

  2. Seitz, H. K., & Stickel, F. (2007). Molecular mechanisms of alcohol-mediated carcinogenesis. Nature Reviews Cancer, 7(8), 599-612.

  3. World Health Organization. (2018). Global status report on alcohol and health 2018. World Health Organization.

  4. Zakhari, S. (2006). Overview: how is alcohol metabolized by the body?. Alcohol research & health: the journal of the National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism, 29(4), 245-254.

  5. Baraona, E., & Lieber, C. S. (1979). Effects of fasting and chronic alcohol consumption on the metabolism of ethanol in the rat. The Journal of clinical investigation, 63(6), 1240-1246.